【呪術廻戦】226話の解説

五条悟VS宿儺の面白さ

今描かれてる五条悟VS宿儺だが、現在のこの二人の戦いはある特徴的描かれ方がされていて、それが非常に面白い。それはあくまで「情報の深掘り」で描いてることだ。

例えば、223話で開幕五条が放った200%虚式「茈」があるが、あれは呪詞・掌印を省略しないことで威力を底上げさせていた。

「呪術を極めることは引き算を極めること」「呪詞・掌印など、術式を構成あるいは発動させるまでの手順をいかに省略することができるかで術師の腕は決まる」
呪術廻戦223話

このような情報が明かされたが、これはこの漫画でよく用いられる「足し引き」の深掘りだ。例えば、交流会では「五条悟の侵入を拒む代わりにその他すべての者が出入り可能」という帳が下されたが、これは「他すべての者が出入り可能」という引き算によって、「五条悟の侵入を拒む」という足し算が生まれている。

この設定はこの漫画でよく用いられるが、「呪詞・掌印などを省略しないことで術式の底上げが可能」というのは初出。ただ、完全に初出の情報というわけではなく、あくまで「足し引き」の設定の深掘りとなっている。我々が知っている情報がさらに深掘りされる形の新情報だった。

前回の225話も「閉じない領域との押し合い」が描かれたが、これも言ってしまえば「領域展開の深掘り」だ。領域の押し合いはとっくに描かれており、「閉じない領域の場合、領域自体の押し合いはなく、結界内で必中命令の押し合いとなる」という深掘りがなされた。

そこから宿儺は術式効果範囲が相手領域の外側に達するため、領域外から五条の領域を攻撃。「領域の結界は外側からの攻撃に脆い」という特性を突いて、五条の領域を破ってみせた。これは「ここでそれを持ってくるか」と全読者が唸ったはず。本当に読んでて気持ちよかった。

そして、今回五条が用いた反転術式による術式の治癒。これも「そんな発想があったかよ！！！」と思わされる深掘りだった。反転術式は通常、肉体を修復させる技だが、五条悟はそれを焼き切れた術式の治癒に応用させてみせた。「「肉体は術式に刻まれる」という設定なので、だから術式の治癒も可能だった」という意見もあったが、確かにそういう理由からかもしれない。ただ、乙骨もその発想に驚いていたので、こんな芸当ができるのは五条悟くらいだろうが。

このように、現在の五条悟と宿儺の戦いは面白いくらい「情報の深掘り」で描かれている。新鮮な情報ではあるが、「それどっから湧いてきたんだよw」と思うようなポッと出の情報が使われていない。あくまで我々が知っている要素の中から新情報を追加してくれているのだ。

この制約の中でもちゃんと面白いってのが凄い。まったく新しい情報を出してしまったほうが作り手としては楽だと思うが、あくまで「すでに出した情報の中で描く」ということにこだわって描かれている。だから、後付け感がないし、我々も「そんな発想があったかよ！！」と驚ける。既出の設定の深掘りだけで描くのはともすると退屈な展開にもなりそうだが、そこをちゃんと面白く描けてるのが今の戦いの凄さである。

そして、それは五条悟と宿儺の対決だからこそというのもある。既存の技の規格外の使い方は五条悟と宿儺にしかできないだろうし、こういう描き方をしてるからこそ、この二人が他術師といかに規格外かってのが浮き彫りとなる。本当にこの二人の戦いにふさわしい。

伏魔御厨子の画

宿儺の領域が制し、必中となった宿儺の全撃が五条悟に襲いかかるが、その時の画が本当にかっこいい。

漫画の画はこういうワンシーンを印象的に描くのに適している。逆に、アニメーションだと動きの中のワンカットになるので、ここまでの迫力が出ないことが多い。こういう「一瞬のかっこよさ」を余すことなく伝えられるのは、漫画の画ならではだろう。

ここでの五条悟の「ああ・・・良かったよ・・・術式の性能では僕の方が圧倒的に上だ」というセリフだが、これは「五条が宿儺の術式が必中になっても耐えられている」ことを表している。宿儺の絶え間ない斬撃も強力なのは間違いないが、五条の無量空初だったら宿儺は即殺だった。「お前の術式、食らってもこんなもんかよ」という五条の皮肉が込められたセリフと思われる。

加えて、注目したいのが五条悟の硬さだ、この斬撃は石流が簡単に両断されたほどの威力だ（しかも、この時まだ指15本分）。

この時より高出力かつ比べ物にならないほどの量の斬撃を浴びても耐え続ける五条悟が異常すぎる。「反転術式で回復し続けてるから」というのもあるだろうが、「五条悟の呪力強化が他術師の比ではないから」というのもあると思う。例え、反転術式があろうと、呪力強化で身を守れねば即殺されて終わり。それに耐え続けられているあたり、五条悟の呪力強化がとんでもないレベルであることがうかがえる。